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いけれども人間が生きていくためには不可欠の労働時間というものがあるのではないか。
例えば子どもを育てる育児やお年寄りのお世話をするというような時間は、直接的な報酬には結びつかないが、社会のため或るいは人間が生きていくためには不可欠な時間です。
「女性は経済的報酬の無いような仕事ばかりやっているから経済的に自立出来ない、無償労働をもっときちんと経済的に評価するように」、と北京会議でも話題になっておりましたが、それとは別に人間として必ずそうした報酬にならない仕事というのは避けて通れず、やらなければならないもので、お金に換算するとかではなしに、みんなが分かち合わなければならないというように考え方を変えていかなければと思います。
●今後のボランティアの役割
例えば環境を守ること、特に日本の場合は深刻ですが、産業が大変発達し経済活動が非常に大きくなる中で、地球上の自然がそれだけの負担に耐えられなくなってきており、何らかの形で環境を保全する活動というものが必要になってきています。
或いは国際協力においては、途上国の人達が余りにも豊かな先進国と格差があり、非常に貧しい暮らしをしており、人道的にもそういう人達にも手をさしのべなければいけないのではないか。或いは青少年の間で「いじめ」や「覚醒剤」などいろいろな問題が起こっているが、こういった事を何とか救わなければならないのではないか。またいろいろな新しい芸術にチャレンジするのに、必ずスポンサーがついて自分がやりたい事、新しい美意識を直ぐに世の中に問える人ばかりではなくて、報酬にはなかなか直結はしないのだけれども新しい世界を切り開いている人がいるのではないか。
そういったものをどれだけ社会が全体としてサポートするか、或いは社会がサポートするだけではなく、実際に主体として関わっていくのか、これが今、大変重要になってきているのではないかと思います。
今までは、国際協力や環境保全にしても「行政、国、地方自治体の仕事なので、税金で公務員がやればいい」という考え方が強かったのではないかと思います。私自身も四半世紀公務員をやってきています中で、公務員の限界というものを痛感しております。どういう事かと申しますと、どれだけ善意をもってやったとしても、公務員というのは絶対に先ず公平でなければならない。あの人にはこういう事を、この人にはこういう事というのは決して今の多様化する社会のニーズとは相容れないところがあります。税金でやる以上はみんなに公平に、可愛子なしに、贔屓なしでやらなければいけません。1人ひとりの対象の方達が全く違ったニーズを持っているわけです。そこに税金をかけて公務員がとことん違うニーズに対しサービスを提供するところまでレベルを高めるのが質のいい福祉行政という考え方もありましたが、それでは余りにも負担が多過ぎるという問題と、例えどれだけお金をかけて質を高めたとしても、1人ひとりのニーズに耳を傾け、ヒューマンなコミュニケーションをとりながらやっていくという事は難しいのではないか。
例えば家族、近所の方・友人等が行う介護が最高だとされるのに大きな原があるのではないか。家族、血の繋がっている人達だけに限定しないでも善意を持っている人達が進んで介護ボランティア活動を担っていく事が、実は1番質のいいサービスになるのではないかなと、しばしば考えております。

 

 

 

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